アメイジング・グレイス(Amazing Grace:すばらしき恵み)は、
ジョン・ニュートンの作詞による賛美歌である。特にアメリカで愛唱され、
またバグパイプでも演奏される。"grace"とは「神の恵み」「恩寵」の意。
作詞者はジョン・ニュートン (John Newton)。作曲者は不詳。
アイルランドかスコットランドの民謡を掛け合わせて作られたとしたり、
19世紀に南部アメリカで作られたとするなど、諸説がある。
ジョン・ニュートンは1725年、イギリスに生まれた。母親は幼いジョンに
聖書を読んで聞かせるなど敬虔なクリスチャンだったが、ジョンが7歳の時に
亡くなった。成長したジョンは、商船の指揮官であった父に付いて船乗りと
なったが、さまざまな船を渡り歩くうちに黒人奴隷を輸送するいわゆる
「奴隷貿易」に手を染め巨万の富を得るようになった。
当時奴隷として拉致された黒人への扱いは家畜以下であり、輸送に用いられる
船内の衛生環境は劣悪であった。このため多くの者が輸送先に到着する前に
感染症や脱水症状、栄養失調などの原因で死亡したといわれる。
ジョンもまたこのような扱いを拉致してきた黒人に対して当然のように行って
いたが、1748年、彼が22歳の時に転機はやってきた。船長として任された
船が嵐に遭い、非常に危険な状態に陥ったのである。今にも海に呑まれそうな船
の中で、彼は必死に神に祈った。敬虔なクリスチャンの母を持ちながら、
彼が心の底から神に祈ったのはこの時が初めてだったという。すると船は奇跡的
に嵐を脱し、難を逃れたのである。彼はこの日をみずからの第二の誕生日と決めた。
その後の6年間も、ジョンは奴隷を運び続けた。しかし彼の船に乗った奴隷への
待遇は、動物以下の扱いではあったものの、当時の奴隷商としては飛躍的に改善
されたという。
1755年、ジョンは病気を理由に船を降り、勉学と多額の寄付を重ねて牧師と
なった。そして1772年、「アメイジング・グレイス」が生まれたのである。
この曲には、黒人奴隷貿易に関わったことに対する深い悔恨と、それにも関わらず
赦しを与えた神の愛に対する感謝が込められているといわれている。
この曲のほかにも、彼はいくつかの賛美歌を遺している。
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