ベトナムに伝えられる水上人形劇は、ロイ・ヌオック〔RoiNuoc〕といい、
一説によると9世紀の中国・宋代にあったという「水傀儡」と同種のもの、
あるいはその流れを汲んだものではないかと考えられている。
1121年にHaNam省DuyTien地方のDoiパゴダに建てられた漢文の碑文に
よると、当時の文化人・Nguyen Cong Batが李王朝の宮廷で水上人形劇が
催された光景を描写している。水上人形劇の起源については定説はないが、
恐らく12世紀の碑文の記録以前に紅河デルタ地帯の稲作を中心とした農村で
演じられていたことは容易に想像できる。
現在伝統的な水上人形劇は、ハノイを始めとする5つの地区に数えられる。
劇団は村ごとの職能組合で、それぞれ独自の「約束ごと」によって活動し、
入団に際しては一座の秘伝を堅く守るという誓いを立てなければならず、
現構成員の子供や孫が優先的に受け入れられる。かつては、泥水に長時間つか
り人形を操ることに体力的に適さないと考えられたこと、また人形劇の秘伝が
夫の家族へともれることを恐れて、女性参加は認められなかった。
伝統的な水上人形劇団は、演劇のために使用する池を所有し、魚の養殖等で
活動資金を捻出し、パゴダや寺院の毎年の定期公演を認められるという権利を
有している。
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